高野山 2002.01.15〜01.16

以前から、南海高野線の駅に惹かれていた。独特の装飾が施された駅が続くらしく、その敷設目的が某宗教の総本山への参拝というあたりからして面白そうだ。しかもまだ未乗。1月半ばの寒い時期、年休を取って出かける。今回は、一人だ。

01/15(Tu)
会社から急いで帰宅、風呂に入って急いで支度し出発する。出発間際に長女・歩美に泣かれる。最近私が一人で出かけるときは、必ず泣くかゴネるので、参ってしまう反面ちょっとうれしい。あと7〜8年すると、追っ払われるようになるのかな?
週末に三鷹にある「ジブリ美術館」へ行く予定なので、必ず行くと指切りして言って聞かせる。
今回は、大阪まで夜行バスを利用する。普通の便だと8610円かかるのだが、5000円で行ける便が1便だけある。
「青春ドリーム大阪号」という名前で、普通の便が横独立3列シートなのを、この便では横2列+2列のバスを使う。
狭いのだが、何人かで移動するにはむしろ座席が近い方が何かと楽しいだろう。事実、一人で乗る客は少ない。
私の座席は、車両の最後部座席の窓側。後ろの2列は通路を挟んだ反対側がトイレになっており、周りを気にしないですむ。
今日は満席のはずだが、どういう訳か隣は乗ってこないまま発車。ラッキー、大阪まで2席分使って眠れる!
ビールとつまみを買ってあるので、外を見ながら流し込む。スカイラインGT-Rのパトカーが抜いてゆく。会社の後輩が言っていたGT-Rのパトカーというのはあれか。
しばらくしたらアルコールのせいか眠くなり、酒臭いであろう息で空気枕をふくらませて眠る。

01/16(We)
千里ニュータウン到着直前に目が覚めた。空気枕のおかげで快眠。途中の休憩にあまり気がつかなかった。西天下茶屋
しばらくして大阪駅に到着、まだ5:30で、時間をつぶせそうなところが見あたらないので先へ進む。
芦原橋で下車する。やはりあたりにファミレスなどはなく、仕方がないのでコンビニでココアと朝飯となるおにぎりを買う。細かい雨が降っていて、とても寒い。
南海芦原町駅まで歩き、誰もいないホームで朝食。雨で煙る向かい側のホームを眺める。なかなか風情がある。
すっかりたいらげたが、ココア1本では寒いので、やってきた列車に乗ってしまう。
次の木津川で下車。あたりに人家が少なく、駅前も荒れている。とても大阪環状線からすぐ近くの駅とは思えない。時間のせいもあるが無人で、自動改札だけが大手私鉄の駅であることを伝えている。
津守・西天下茶屋も下車。やっと明るくなってきた。西天下茶屋は小さいが立派な駅舎があり、念願が叶う。一度来たかったのだ。
後続の列車で進む。予定より早い列車に間に合ったので、途中の我孫子前で下車する。妙に背丈の小さい駅舎がある。
乗り継いで泉北高速鉄道に乗る。この鉄道は南海中百舌鳥駅から泉北ニュータウンへ向けて分岐している路線で、関東で言えば北総開発鉄道のような存在だ。南海への乗り入れもかなりの本数があり、しかも10両の長い編成で走る。
戻って南海線を下る。今日は水曜日、ほとんどの乗客は通勤通学、それを思うと私は気楽なもんだ。
北野田あたりまで来ると畑が増えてくる。西武池袋線も東京−埼玉間で一瞬畑が増えるが、それをみているようだ。

紀見峠で下車する。登山口のような雰囲気の駅で、狭い駅前に雑貨屋さんが1軒ある。南海電車
後続の列車で進み、紀伊清水下車。ここからが今回の目的地なのだ。
自動改札の調子が悪く、駅員がカードを2度通したため運賃が2重取りになった。返金するよう掛け合ったがなかなか話が通じず参った。駅員の勘違いで、謝って頂いたので別に文句はないが。
次の列車まで時間があるので、駅前の喫茶店で休憩する。アメリカンを頼んだら、まずお茶が出てきて驚き。次にコーヒーと水とゆで卵が出てきてまた驚き。名古屋の喫茶店が「サービス過剰」と言えるくらいいろいろ出てくるのは知っていたが(コーヒーにお茶とマドレーヌが出てきたり、クッキーが出てきたりetc.)、このあたりでもそうなのだろうか?
ゆで卵はおいしく頂き、コーヒーをすすって至福の時を過ごす。好きな駅に降りてその前にある喫茶店で旨いコーヒー・・・最高。
後続列車で九度山下車。列車にお坊さんが乗っている。さすがは高野山へ向かう列車だ。
九度山から隣の学文路まで歩く。紀ノ川沿いの河岸段丘が見渡せる。高野線は開業が古いせいか、煉瓦積みのアーチが所々にある。
学文路は、言わずと知れた有名な縁起担ぎ駅名で、受験シーズンには入場券が売れる。話のタネに1セット買っておく。
再び下り列車に乗る。さっき降りた九度山を過ぎると山深くなってくる。渓谷を何度も渡る。遊歩道が川沿いにあるようで、今は人影はないが夏に歩くと涼しそうだ。
下古沢・高野下と折り返して進む。上古沢で数分停車。崩れ落ちそうな古い駅舎が建つ。なんば行きの特急が通過していく。
急カーブとトンネルをゆっくり走り、列車は紀伊神谷に停車、下車してみる。見渡せる範囲に人家がなく、山に還りそうな駅舎がひっそりと建っている。駅前通りが杉並木だ。そろそろ腹が減ってきた。会社の人にもらったせんべいで生き返る。
戻って紀伊細川にも下車。怖いくらいの高台に駅がある。駅員さんがきさくな方で、しばらく話して過ごす。高野山のことを聞いて、行くのが楽しみになってきた。

下り列車の終点、極楽橋でケーブルカーに乗り換える。古い寺院のような駅構内、駅前に道はなく(!)、河川工事の真っ最中。乗り換えのためだけにあるような駅だ。
ケーブルカーで上ったところにある高野山の駅は宗教がかったデザインだが、年月を経ているせいか嫌味に感じない。
山内のバスが乗り放題のフリー切符を買って奥の院へ向かう。駅から女人堂まではバス専用道路で一般は通れないらしい。
10分あまりで奥の院前に着く。雨が降る中、タオルを頭に乗せて歩く。
様々な企業の祈祷碑がある。聞き覚えのある企業も多く、意外な感じがする。それぞれの碑に工夫が凝らされており、見ていてなかなか楽しい。
御廟まで雨の中たどり着く。灯籠の数に圧倒される。熱心に祈る人、経を上げる人、宗教とは無縁の人生を歩んできた身としては、別の国に身を置いているかのようだ。大門
雨の中、バス停まで戻る。さすがに寒い。見ればところどころ雪が残っている。お遍路さんのような衣装の方が多いが、あれは罪深い人がその罪を清めるための衣装と聞いたことがあるが。違ったかな?
戻ると大門行きのバスが発車間際、飛び乗る。晴れていれば大門までは歩こうかと思っていたのだが、この雨では・・・仕方がない。大門バス停で下車。町はずれで、かつての町の入り口であったであろう大きな門が聳えている。雨で霧がすさまじく、門の上の方が煙って見えない。
戻って宝物館へ。水曜日の午後では、客などいようはずもなく、ほとんど貸し切り状態で寒い館内を見て回る。
・・・ただただ、仏像の迫力に圧倒される。部屋の中に自分しかいないと、すべての像が自分を見つめているような錯覚に襲われる。正直言って、怖い。目に吸い込まれそうだ・・・。
歩いて町の中心部へ戻る。本山である金剛峰寺の前を通るが、寒くて空腹で、巡る気にならない。
ほとんど客がいない土産物屋で土産を買う。やはりごま豆腐と高野豆腐は外せないだろう。
近くの食堂で遅い昼食にする。開店休業状態で、客は私しかいない。親子丼大盛りを頼んだら、冗談みたいな盛り付けで出てきた。3人前はありそうな量だ。いくら朝のおにぎりからロクに食べていないとはいえ、これはさすがにきつそうだ。
優に30分はかけて完食。が、きつい。。。動きたくない。。。

霧で煙る高野山駅非常に寒かったが、人が少なく充実していた。金剛峰寺を見られなかったのは残念だ。こんど来たら竜神温泉へ抜けて白浜・瀞峡なんてのはどうだろう。
バスで駅へ向かう。だんだん霧が濃くなり、50メートル先が見わたせない状態になってきた。
バスは無事高野山駅へ到着した。が、霧で駅舎の写真が撮れない! 無念。
このまま大阪へ戻るが、特急「こうや」号を使ってみる。南海の特急は、ラピート以来だ。
特急券を買ってケーブルで山を下る。霧はみるみる薄くなり、「こうや」の待つ極楽橋駅は全く霧がない状態。山の気候というのは不可解きわまりない。
「こうや」は、暖色系のカラーリングでなかなか居住性は良い。だが、仮にも観光特急なのだから、飲み物の自販機だけではなく簡単なワゴンサービスが欲しいところだ。
居眠りしてしまい気がつくと橋本、ここで4両増結する。ガラガラなのだが、なんばからの折り返しでは通勤時間帯だから満席になるのだろう。
妙に眠い。さっきの大盛り親子丼のせいかお腹の調子がすこし変だ。
南海本線と合流してしばらく走り、新今宮で下車する。すぐにJRに乗り換え天王寺へ。帰りは伊丹空港から飛行機に乗る予定なので、天王寺駅前からリムジンバスを利用する。駅員にバス発着所を聞いて、歩いて5分ほどの乗り場から乗り込む。
空いていたので、一番前左側の席で前を見ながら過ごす。スリルあふれる運転のドライバーで、面白かった。途中で事故るかと思うことが2度あったのはご愛敬か。
空港では「551蓬莱」の豚まんを買って飛行機へ。乗り物で酔うことはめったにない私が機内で気持ち悪くなり、いてもたってもいられない。強烈な吐き気。親子丼のせいか?
飛行機のトイレ2度、羽田空港のトイレ1度、泉岳寺駅のトイレ1度と何度かの危機を乗り越え、自宅最寄りの西馬込駅に降り立ったときはノドまでこみ上げてきていた。こんなことは初めてだ。
翌日は熱が出た。どうやら、寒い高野山で雨の中歩き回って風邪をひいたようだ。