伊那・高遠 2002.04.06〜07

青春18きっぷが1回分余った。妻に持ちかけたところ、長女の歩美付きで出かけてよいことになった。ならば、時節柄、伊那高遠へ一度行ってみたい。会社の同僚にも勧められた、言わずと知れた桜の名所だ。
中央線に朝早く乗るには、1.まともに西馬込から乗って新宿経由 2.大森へ出て新宿経由 3.南武線の武蔵中原まで行って立川経由 の3通りあるが、もっとも早く出られるのは3.の南武線経由。武蔵中原の駅に4:20までに着けば、始発から乗り継いで高遠最寄りの伊那市には9時頃に着ける。問題はその武蔵中原までどうやって行くかで、自宅から11kmほど離れていることを考えると、子連れではタクシーで5000円くらいかかるのを覚悟しなければならない。
そんなことを考えていたら、妻から「夜行で出れば?」の救いの声。しかも、長女は友達と遊ぶので連れて行かなくてもよいとのこと。
スクーターを飛ばして大森駅へ行き、夜行急行アルプスのグリーン席を取ったのは言うまでもない。JR東日本の株主優待券が役に立った。

2002/04/06(Sa)
普通に風呂に入り、普通に子供を寝かしつけ、普通にパソコンを触っていたら23:00になったので出かける。普段の土曜日の夜と何ら変わりがない。
五反田で山手線に乗り換え、新宿で下車、すでに入線している急行アルプスに乗り込む。23:30過ぎだというのに、新宿駅ホームは人であふれ返っている。
私の席は2列の窓側、荷物を通路側の席に置き、シートをいっぱいに倒して横になる。車内を見回したが、他に客は7人ほどしかいない。普通車も空いているようだ。
そのまま客は増えずに発車。明日朝は3:49着の辰野で降りるので、さっさと寝る。

2002/04/07(Su)
岡谷を過ぎて車掌が起こしにきた。寝ぼけ眼で支度をし、辰野で下車。3:50、こんな時間なのに結構下車客がいて驚く。
次に乗る飯田線の始発列車は4:52発、約1時間ある。だが、外は雨、PHSで天気予報を調べたら、明け方には上がるようだが、これでは気分が盛り上がらない。
辰野駅前に出てみたが、店がまったく開いていない。もっとも、朝4時に開いている店など、コンビニかファミレスくらいなものだが。
仕方なく駅待合室で時間をつぶす。驚いたことに、同じ列車に乗るため駅で待っている人が他に8人もいる。みなさん、早起きで・・・。
洗面所で歯磨きと洗顔を済ませる。ブラシを忘れ、若干寝グセが付いたままになっている。失敗した。
始発列車に乗車する。ワンマン列車で、切符に日付を入れてもらうため運転手に申し出る。青春18きっぷが今のスタイルになって何シーズンか経つが、日付が見づらいこと甚だしい。改善の要求が、利用者サイドからだけではなく現場から出そうなものだが、今のところ変更するといった動きはないようだ。

列車はちまちま小さな駅に停車しながら進む。飯島のあたりは沢と尾根を縫うように線路が敷かれており、ジグザグに進んでゆく。沢には大きな岩がゴロゴロしていて、荒々しい印象を受ける。なぜに岩ばかりなのだろう。
山吹で下車。古い民家のようなにおいのする駅舎を後にし、隣の下平まで歩く。小雨ぱらつく中、タオルを頭に乗せながら歩く。こんなことを最近やった覚えがある。そう、高野山で同じことをやって、翌日熱をだしたんだった。
農村の細い道やあぜ道を通り、20分ほどで下平に到着、折り返しの列車に乗る。体が冷えているだけに、車内の暖かさがありがたい。霧が濃く、遠く山並みが見えるはずの区間でも何も見えない。
伊那大島−山吹間に、いくつか石積みのアーチ道路橋が架かっている。古いもののようで、一度渡ってみたくなる。
七久保で下車、駅前の商店はまだやっておらず、朝食を買うことができない。仕方なく缶飲料でごまかす。缶ミルクセーキなんて、こんな時しか飲むことがない。
農家の方が何人か出てきて遠くで何かやっているのだが、霧が濃くて何をやっているのか分からない。山に雲か霧か判然としない白いものがかかり、煙を噴いているように見える。
田切で下車。北へ戻るにつれ霧が薄くなり、晴れ間も覗いてきた。桜を見に来て雨ではやっていられない。
すぐにきた折り返し列車に乗り、飯島で下車する。雑貨店や飲食店が数軒あり、いくらか大きい街のようだ。駅前の店でパンと缶ココアを買い、駅の待合室で朝食にする。
町総出でドブさらいなのか、あっちこっちで側溝の蓋をめくっている。駅待合室に居合わせた地元の方らしいおばあさんに聞いてみたが、何だか分からないそうだ。
折り返し列車に乗り、小町屋で下車。思慮浅い私の頭で考えるに、売春宿でもあったのか?と思ってしまう駅名だが、実際は駒ヶ根市郊外ののどかな駅だ。

伊那福岡まで一駅戻り、また折り返して田畑で下車。さらに折り返して伊那北で下車する。手元の時刻表だと、10分後くらいに高遠へのバスが出るはずだが、目の前にバスが停車しており、運転手が大声を上げている。
「高遠方面、発車しますよー」
バス停の時刻表を見ると、既に発車時刻を2分ほど過ぎている。時刻改正日は2002/04/06、昨日だ! とりあえず乗り込む。どうやら時刻改正で発車時刻が繰り上がったらしい。
このバスは次の伊那市駅も経由する。一気に混んだ車内には、さっき伊那北で降りた列車に乗っていた中年の団体の姿もある。伊那北で降りれば、確実に座れたのに。
今日は混雑しているらしく、乗り切れないお客さんが出ることを見越してか続行便が出るようだ。東南アジアの方っぽい団体さんがその続行便へ移っていった。
隣に座ったおじさんが、メモに何かを書いている。見れば全てハングルだ。声を掛けられ、2〜3言会話する。もちろん、日本語でだ。さっきの東南アジア風団体さんといいこの韓国の方といい、高遠はそんなに外国人に人気があるのだろうか。
バスは快調に走ってゆくが、途中で車内アナウンスが流れた。この先の高遠町内で渋滞しているため、迂回するそうだ。なんと今きた道をしばらく引き返し、途中の細道をひた走る。どこを経由しているのか土地勘のない私には全く分からず、少し不安になる。

1時間弱で城址公園のたもとに着き、坂を登り公園内へ。お花見会場そのものだが、桜の本数が半端でなく、色が濃い。夜桜もよさげだが、人が多くてガッカリしそうなので平日に来たいところだ。
久しぶりのお花見会場の雰囲気を楽しみ、出店を見て回る。山の裏手に、「絵島囲み屋敷」という、高遠に流刑になった人の幽閉の様子を再現した資料館があるので行ってみる。山内の入場券で見られるので、実質無料だ。
残念ながら「再現した」だけといった建物で、壁に電灯のスイッチがあったりして興ざめだが、雰囲気は伝わってきたのでよしとしよう。
人気のない山道を下り、賑やかな町中へ出る。どこの店も土産の販売に精を出していてなかなか賑やかだ。そんな中を1Kmほど歩いた街はずれにあるバスターミナルから、伊那市ゆきのバスに乗る。混んでいる。
振り返って城址公園を見ると、山の上にピンクのお盆が載っているように見える。改めて、見事なものだと思う。

居眠りしながら下ってきて、天竜川を渡るところで、鯉のぼりがたなびいているのが見える。伊那北で下車し、駅近くの中華料理屋に入る。目的は一つ、当地名物ローメンだ。会社の同僚に聞いて以来、一度食べてみたかったのだ。
メニューにあった「チャーローメン」大盛りを頼み、しばらくして運ばれてきたそれを見て、まず量に驚いた。山盛り。汁の多い焼きそばに見える。味は、、、ソース味の焼きそばに近い。何か懐かしい雰囲気のある食べ物だ。
20分ほどかけて平らげ、駅へ戻る。だが、乗る列車の発車時刻まで30分以上あるので、隣の伊那市駅まで歩く。食後の運動だ。
古い町並みのようで、アーケードの上を見ると妙に古い装飾が残る建物が多い。故郷の新潟県新発田市に通じるものがあり、懐かしく思う。
伊那市の駅は混んでいた。高遠帰りと思しき人が改札前で列をなしている。私もその列に並び、改札を待つ。
到着5分前になり、改札が開始された。列は前の方の人から進むなどということは、保育園児でも知っていそうなことだが、残念ながら現代の中年男性の団体は、保育園児にも劣るようだ。平気で横から列に割り込んでくる。人の良さそうな爺様が平然とやるから始末が悪い。
そんなとき、後ろにいたこれまた中年の女性グループの一人が強烈な一言。
「最近の若い者は、ってよく言うけれど、近頃じゃ年寄りの方がだめなのねぇー」
・・・耳が遠くて聞こえないのか無視したのか判然としないが、爺さんらは立ち止まることなくホームの先へ行ってしまった。
やってきた列車は快速で、いくつかの駅を通過する。それはよいのだが、ただでさえあまり乗り心地のよくない飯田線で飛ばすものだから、ザウルスで文字を書くのも一苦労の荒れた乗り心地で辟易する。もう少し車輌か線路を改善して欲しいものだ。

下諏訪で下車する。12年半ぶりに降りたが、前回は朝6時頃で暗かった覚えがある。今はなき中央夜行に初めて乗った、1989年の冬のことだ。
駅の近くに温泉銭湯があるはずで、前に行ったことのある妻から簡単な地図を書いてもらってきている。が、その地図の通り進んでいるのだがいっこうに風呂屋らしき建物は見えて来ず、聞いていたのとは違う銭湯に着いてしまった。どこでも構わないので、ここで一風呂浴びる事にする。
「新湯」と書かれた建物だが、古くて小さい。入湯券を買おうとして自動券売機に200円を入れたが100円しか認識されず、返却しても100円しか戻らない。番台の婆さまに言ったら快く応じてくれた。最近、温泉の番台の方相手にケンカ腰になることが多かったのだが、和めてよかった。
早速入湯、あ、熱い!非常に熱い。指折り20数えるのがやっとで、すぐに上がって身体を冷やす。また入浴、今度は25でギブアップ・・・。居合わせた爺さん達は平然としている。信じられん・・・。
タイル張りの富士山、妙な形の蛇口、シャワーない、そんな昔ながらの銭湯で、居心地がいい。これでもう少し入りやすい湯温なら最高なのだが。
出ようとしたとき、さっきの番台の婆さまに声をかけられた。下諏訪の銭湯を巡ってスタンプを集めると、手拭いがもらえるらしい。期限はなく、今度来たときにも使えるそうだ。こういうのがあると、次回も来てみようかという気になる。

駅へ戻って特急あずさに乗り込む。12月に利用したときと同じ列車で、新型車輌を使用している。前回は歩美がコーラをこぼしてえらい目に遭ったが、今回はその心配はない。左右の車窓とも、山々がきれいに見えているが、右側は日差しが強いらしく、全ての窓にブラインドが下ろされてしまった。せっかくすばらしい車窓なのに、どうにかして楽しもうとは思わないのかな。
山梨市周辺の山々の斜面に、苔のように広がるピンク色の部分がある。桃だろうか? シバザクラというのはあんな感じなのだろうか。まだ見たことはないが。
居眠りしながら新宿着。隣の席の方に寄りかかって寝てしまっていた。さぞかし嫌な思いをしただろう。申し訳ない。。。
山手線と浅草線を乗り継ぎ、18:40に自宅着。夕飯までには戻るつもりでいたのだが、間に合わなかった。

廃屋のような山吹駅舎

飯田線の主力、119系

高遠の桜

お花見会場?

下諏訪の銭湯「新湯」